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2019.05.23 / お知らせ, イベント
タペストリーのこと

私の祖父は、お能の笛を吹く人でした。隣の町に暮らしていたので多くのことは知らないし、舞台を見に行っても不思議な世界に夢か真か、ますます分からない。特に秋祭りの薪能は神社の境内で催され、舞台と裏の布一枚の境界線にドキドキしたり、暗闇の中燃える松明の音、屋台のイカ焼きの匂い、隣の公園のローラー滑り台が夜はどうなっているのか気になったり。とにかくお能どころではなかったと記憶しています。家に戻ると座敷はお客様でいっぱい。私と従姉はここぞとばかりに瓶に入ったキリンレモンを飲み、いつものあんこもち(ものすごくおいしい)を食べて過ごしました。堤の脇に生えていたほおずき、小さな鶏小屋、ココという雑種犬がいたことを今書きながら思い出しました。そんな曖昧極まりない記憶が一気に現実味を帯びるモノが私のところにやって来たのです。それは祖父の着物を解いて洗い張りした反物で、なんと陶器の柄。

ご縁があって松尾ひろみさんにタペストリーに仕立てていただきました。今回の展示では、ひろみさんの絵が入った掛軸風のものや、光を通すオーガンジーに描かれた抽象的なモチーフのタペストリー作品も並びます。

ふんわり包んだ物言いでどうしようもありませんが、私としては、ここで人とモノのつながりが新しく生まれたら素敵だなと思っています。

松尾ひろみ展                                    6/7(金)-30(日)                                        10:00-18:00金土日のみオープン